沖縄初のトンネル貯蔵庫「与那の蔵」|国頭の歴史と味わう古酒の旅

国頭村(くにがみそん)の旧与那トンネルが、泡盛の貯蔵庫として使われているのをご存じでしょうか。やんばるに来ても、定番スポットを回るだけでは見えない沖縄の酒文化の深さが、ここには詰まっています。閉鎖されたトンネルの中で泡盛が静かに眠っていると聞くと、どんな場所なのか少し気になりませんか。この記事では、沖縄県内初のトンネル泡盛貯蔵庫として生まれ変わった旧与那トンネルの経緯と、泡盛の古酒が育つ理由、預かり古酒の仕組みまで紹介します。

与那トンネルは泡盛を眠らせる蔵に変わった

国頭村(くにがみそん)の旧与那トンネルは、現在ヘリオス酒造の泡盛貯蔵庫「与那の蔵」として使われています。ヘリオス酒造は名護市(なごし)に本社を置く酒造会社で、「与那の蔵」は3つの製造設備のうちの1つです。

国頭村の旧トンネルを使った「与那の蔵」

「与那の蔵」という名前は、貯蔵庫の名前であり、熟成させた泡盛の商品名でもあります。国頭村の与那集落に近い山中の旧トンネルを、ヘリオス酒造が泡盛の熟成に活用し始めた場所で、2008年から貯蔵庫として使われています。

トンネル内は温度と湿度が安定しやすく、泡盛の熟成に向いた環境が整っていました。外気の影響を受けにくい山中のトンネルという立地が、酒蔵代わりとして適しています。泡盛は熟成を重ねることで風味が変化する蒸留酒で、保管する場所の環境がそのまま味わいに響いてきます。

旧与那トンネルの基本情報
項目 内容
場所 沖縄県国頭村与那周辺
トンネル竣工 1973年1月
閉鎖 1995年(新与那トンネル開通に伴い)
全長・幅 長さ159m、幅8.5m
現在の使い道 泡盛の貯蔵庫
貯蔵庫名 与那の蔵
貯蔵庫使用開始 2008年1月
関係会社 ヘリオス酒造株式会社

使われなくなったトンネルが、泡盛の蔵になるまで

旧与那トンネルは、村民の生活道路として長年使われてきた場所です。新しいトンネルが開通して役割を終えてから、13年ほどそのままになっていました。それが2008年に、ヘリオス酒造が泡盛の貯蔵庫として使い始めたことで、「与那の蔵」として生まれ変わっています。使われなくなったトンネルが、地域の酒文化を支える場所になっています。

旧トンネルが泡盛の熟成に向いている理由

泡盛をおいしい古酒に育てるには、温度と湿度が安定した場所が必要です。旧与那トンネルは山の中を貫いているので、外の気候がほとんど届きません。この自然な安定が、泡盛の熟成にとってちょうどいい条件を生んでいます。

夏も冬も、トンネルの中は変わらない

トンネルは地中を通っているので、夏の蒸し暑さも冬の冷え込みも、内部にはほとんど影響しません。トンネル内は温度と湿度が安定しており、泡盛の熟成に向いた環境が整っています。人工的な空調を使わなくても、山中の立地が自然に熟成向きの条件をつくり出しています。

急な温度変化は、泡盛の味わいにばらつきを生む原因になります。余分なコストをかけずに安定した熟成環境が得られるのは、旧トンネルならではです。

泡盛が古酒になるということ

泡盛には「古酒(クースー)」と呼ばれる熟成酒があります。沖縄県酒造組合によると、古酒と表示できるのは全量が3年以上貯蔵された泡盛に限られています。ただ長く置いておけばいいというわけではなく、保管する環境が味わいに直接響いてきます。

~泡盛の大きな魅力は、年月をかけて熟成させれば素晴らしい古酒に育っていくことです。沖縄では、甕やビンに入れて熟成させることを「寝かせる」とよく表現しますが、寝かせば寝かすほど香りも甘くなり、口に含んだときの舌触りもまろやかになります。 ~

沖縄県酒造組合

泡盛はウイスキーなどと違い、ガラス瓶の中でも熟成が進みます。時間とともに少し粘度が増して、まろやかで甘みのある味わいに変わっていきます。旧与那トンネルの安定した環境は、その変化を支えています。

私が行った旧与那トンネル、海側からの体験

以前から行きたかった旧与那トンネルを見に行ってきました。那覇方面から向かうと、トンネルの手前に海岸沿いへ続く細い道があります。私は入口手前の駐車場に車を置き、トンネル入り口に向かいました。

トンネル入り口は壁で塞がれていましたが、なんとも言えない甘い香りがただよってきてこの中には酒蔵があるのだなとわかりました。海沿いの道へ行きたかったのですが、警告看板がありあきらめて、反対側からアーチ橋を見ようと、新与那トンネルを抜けた先の入り口から回ってみることにしました。

トンネルを抜けたところで車を止めるとアーチ橋が遠くに見えました!テトラポッドがたくさん置かれてある、旧道をゆっくり海を眺めながら歩いて行きます。アーチ橋まで行きたかったのですが、細い堤防の上を歩かなければならず、落ちそうで私には無理と思ったので残念ながら断念しました。

与那の海はシュノーケリングもできます。それだったら海から見てみようではないかと思い、シュノーケリングで海から見ることにしました。美しい与那の海から見る古いアーチ橋は、なんともいえない趣があり、昔はこの上を歩いていたのだと不思議な感覚でした。

トンネルのアーチをくぐると小魚がたくさんいて、水面から見るアーチ橋をしばらく夢中になって楽しみました。トンネルの泡盛の蔵、コンクリート造りの古いアーチ橋、そして碧い海が見られるのは沖縄ならではでしょう。沖縄の歴史が残る場所を自分の体で感じられます。

ただ、岩場や断崖に近い場所は足元が不安定で、天候によって海況も変わります。景色に惹かれてついつい奥まで行きたくなりますが、以下の点は気をつけて安全第一で楽しんでください。

  • 滑りやすい苔や濡れた岩場に注意する。
  • 断崖に近い場所は転落リスクあり。
  • 波が高い日は磯場に近づかないこと。
  • 立ち入り制限の表示がある場所には入らないこと。

「与那の蔵」で熟成する預かり古酒とは

「与那の蔵」では、ヘリオス酒造が自社の泡盛を熟成させているだけでなく、個人から泡盛を預かって古酒に育てるサービスも行われてきました。記念の節目に預けた泡盛が、年数をかけて古酒になって手元に戻ってくる仕組みです。

3年か5年、トンネルの中で眠らせる

預かり古酒「与那の蔵」のサービスは2009年6月に始まりました。熟成期間は3年か5年から選べて、温度と湿度が安定したトンネルの中でじっくり寝かせます。かつて村民の生活道路だった場所で泡盛が育っていくというのも味わい深いです。

2009年に預けられた泡盛は、2012年に実際に蔵出しされています。子どもの誕生や結婚など、人生の節目に泡盛を預けた人が、3年後に古酒として受け取れます。時間そのものを贈る感覚が、この預かり古酒を特別なものにしています。

見学や購入はヘリオス酒造へ

「与那の蔵」は、名護市許田(なごしきょだ)にあるヘリオス酒造の本社蒸留所とは別の場所にあります。本社蒸留所では酒蔵見学ツアーを受け付けていて、約2,600もの樽が眠る古酒蔵や、県内唯一の銅製蒸留機なども見学できます。見学は完全予約制で、料金は500円(税込)です。以下をチェックしてから行くとスムーズです。

  • 開催時間:11時〜 / 15時〜(1日2回)
  • 定休日:毎週水曜日
  • 電話予約:0980-50-9686(9時〜17時)
  • Web予約:24時間受付(前日・当日は電話のみ)

預かり古酒のサービス内容や受け付け状況は変わっている可能性があります。最新情報はヘリオス酒造に直接確認してみてください。

国頭村の地域資源として見る与那トンネル

使われなくなったトンネルを泡盛の蔵にするというのは、国頭村ならではの面白い発想だと思います。沖縄固有の産品である泡盛と、閉鎖された山のトンネルが組み合わさって、地域の産業を支える場所に変わっていきました。

古い道と泡盛文化がつながる場所

「与那の蔵」の活用は、国頭村の賛同と協力のもとで始まっています。ヘリオス酒造が単独で動いたわけではなく、地元の理解があってこそ実現した取り組みです。かつて村民の生活道路だった場所だからこそ、地元にとっても思い入れがあります。

ヘリオス酒造は泡盛・リキュール・ウイスキー・ビールなど6種類の製造免許を持ち、やんばるの地域に根ざした酒造りを続けています。その酒造会社が、国頭村の古いトンネルで泡盛を熟成させているというのは、地域の自然環境と産業がうまく重なった例でしょう。

まとめ

旧与那トンネルは、閉鎖された道路が泡盛の蔵に変わるという、なかなか面白い場所です。やんばるを訪れる機会があれば、ヘリオス酒造の泡盛を手に取りながら、この話を思い出してみてください。いつもと少し違う味わいに感じるかもしれません。

与那の海側まで足を伸ばすなら、安全に気をつけながら古いアーチやトンネルの雰囲気を楽しんでみてください。観光地として整備された場所ではないですが、沖縄の歴史と泡盛文化が重なるこの場所は、定番スポットとはひと味違う体験ができます。

あとがき

私が現地に行ったとき、正直ここに泡盛が眠っているとは全然思えませんでした。海風が当たる岩場に古いアーチ、あのトンネルの奥にたくさんの泡盛が置かれているんだと思うと、じんわりした気持ちになりました。

閉鎖された道路が泡盛の蔵になるというのは、沖縄らしい発想だなと思います。地域のものとして使い続けるという感覚が、やんばるを象徴しているような気がしました。やんばるに来たら、ぜひ立ち寄ってみてください。

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