沖縄ラム酒の島めぐり|8島の黒糖が生む香りの違い

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沖縄のラムと聞いて「泡盛と同じようなものでしょう」と思っていませんか。瑞穂酒造(みずほしゅぞう)が数年前に立ち上げた「ONERUM(ワンラム)」では、沖縄の離島8島の黒糖を使い分け、島ごとに全く違う香りのラムが造られています。使われる黒糖も酵母も島によって異なるため、飲み比べると驚くほど個性が分かれます。この記事では、それぞれの島の背景と、香りが生まれる仕組みを紹介します。

友人の一言から始まった沖縄ラムとの出会い

私はサトウキビを原料とした沖縄のラムが、島ごとに全く違う個性をもつということを、友人の「沖縄には島ごとに味が違うラムがあるんだよ」という何気ない一言で知りました。同じ黒糖なのに、島が変わるだけで香りも味も変わるということに驚きました。

泡盛(あわもり)には慣れ親しんでいても、ラムとなると馴染みがない人も多いのではないでしょうか。 調べていくと、沖縄本島だけでなく、離島でも独自のラムづくりをしていることがわかりました。ラムの原料はサトウキビの搾り汁や糖蜜が一般的ですが、沖縄では固形の黒糖を溶かして発酵させる、独自の製法が用いられているのが特徴です。

なぜ島によって味が変わるのか

島ごとの違いが生まれる理由は、原料となる黒糖と、造り手の工夫の両方にあります。まずは、沖縄の黒糖産業が長年抱えていた課題と、それをラムへと転換した経緯から見ていきます。造り手の想いを知ると、味わい方も少し変わってくるはずです。

黒糖が抱えていた課題とラムへの転換

沖縄のサトウキビ栽培は、約400年の歴史をもつ基幹産業です。離島でつくられる黒糖は、長らく土産物や製菓材料として親しまれてきましたが、消費者の好みの変化や安価な輸入糖との競合によって、需要の低迷が続いていました。コロナ禍で観光需要が落ち込んだ時期には、各離島の製糖工場にこれまでにない規模の在庫が積み上がったといわれています。

1848年創業の瑞穂酒造は、那覇市首里(なはししゅり)に蔵を構える首里最古の泡盛蔵です。こうした状況を受け、数年前に「ONERUM(ワンラム)」プロジェクトを立ち上げました。サトウキビと黒糖を高付加価値化することで、離島の産業を支えようとする試みです。同社は泡盛づくりで170年以上積み重ねてきた発酵・蒸留の技術を、ラムという形で再構築しています。

~泡盛同様に需要が低迷し、コロナの影響もあって、黒糖が過去最多の在庫を抱えていることは知っていました。自社の技術で、沖縄県の課題解決に貢献できないだろうか? と考えたとき、沖縄のサトウキビと黒糖を高付加価値化する、新しいラムの開発を決意しました。沖縄のサトウキビと黒糖を原料とした世界基準のラムを造ることで、これらの原料に新たな価値を見出し、次世代につながるアクションを起こしたいと思いました~

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商品開発室長の仲里彬(なかざとあきら)さんのこの言葉のとおり、ONERUMは新商品の開発にとどまらず、離島経済を支える取り組みとして始まりました。現在は、以下の3つのシリーズが展開されています。

  • Single Island Series:離島1島ごとの黒糖だけを使ったラムです。
  • Blended Islands Series:離島8島の黒糖をブレンドしたラムです。
  • One Island Series:自社農園のサトウキビを使うアグリコールラムです。

島ごとの酵母と蒸留がもたらす個性

黒糖そのものの個性に加えて、発酵に使う酵母の違いも、島ごとの香りを分ける要因です。自社ファームのサトウキビ畑から分離したONERUM酵母や、本部町(もとぶちょう) 八重岳(やえだけ)の桜の花から採取した「さくら酵母」など、複数の酵母が島や商品の方向性に合わせて使い分けられています。

同じ黒糖を原料にしていても、使う酵母が違えば生まれる香りの成分も変わるため、ここに島ごとの個性が重なっていきます。

蒸留には、イタリアの蒸留機メーカーから導入した銅製のハイブリッド蒸留機が使われています。泡盛づくりで培われてきた微生物の扱い方や蒸留の技術が、ラムづくりにも生かされているといえるでしょう。原料、酵母、蒸留という3つの要素が重なり合うことで、島ごとに異なる香味の「地図」が描かれていきます。

8島それぞれがもつ香りの違い

ONERUMのSingle Island Seriesは、8つの離島の黒糖を1島ずつ使い分けています。それぞれの位置と特徴を、以下の表にまとめました。地図をイメージしながら読み進めてみてください。

島名 位置 香りの特徴
伊江島(いえじま) 沖縄本島北部・本部港(もとぶこう)からフェリーで渡る島 青りんごやハーブの清涼感からハチミツの甘さへ変化
伊平屋島(いへやじま) 沖縄本島から北へ約41km バタークッキーのような香ばしさとココナッツのミルキーさ
粟国島(あぐにじま) 那覇から北西へ約60km・フェリーで約2時間 青りんごやハチミツを思わせる爽やかな香り
多良間島(たらまじま) 石垣島と宮古島の中間に位置 バナナやライチのような濃厚なフルーツ香
波照間島(はてるまじま) 日本最南端の有人島 グレープフルーツやクリームチーズを思わせる重層的な香り
小浜島(こはまじま) 八重山諸島の中心に位置 ジューシーさとフローラルさが重なるバランスの良さ
西表島(いりおもてじま) 世界自然遺産に登録された島 焼き菓子の香ばしさとレアチーズケーキのようなクリーミーさ
与那国島(よなぐにじま) 日本最西端・台湾まで約111km 和菓子のような甘香ばしさにハーブや柑橘のフレッシュさ

本島に近いエリアの3島(伊江島・伊平屋島・粟国島)

伊江島は本部港からフェリーで渡れる距離にあり、旅行者にとって訪れやすい離島です。テッポウユリの名所として知られ、ラベルにもその花があしらわれています。伊平屋島は沖縄本島から北へ約41km、粟国島は那覇から北西へ約60kmの海上に位置し、それぞれ独自の自然環境をもっています。

3島に共通するのは、青りんごやハチミツを思わせる、爽やかで華やかな香りの系統です。

宮古・八重山エリアの5島(多良間島・波照間島・小浜島・西表島・与那国島)

宮古島や石垣島に近いこの5島は、フルーツや焼き菓子を思わせる、濃厚で甘香ばしい香りの系統が目立ちます。とりわけ与那国島は日本最西端に位置し、台湾までわずか約111kmという距離にあります。和菓子を思わせる甘香ばしさをもつラムが生まれている点が興味深いところです。同じ黒糖から造られているとは思えないほど、島ごとの表情が分かれています。

調べてわかった、沖縄ラムの奥深さ

この記事を書くまで、私は沖縄のラムについて「外国のお酒」という位に思っていました。沖縄のラムについて調べていくと、サトウキビの搾り汁をそのまま発酵させる「アグリコール」という製法があり、収穫時期にしか造れないとわかりました。

世界のラムの多くは糖蜜からつくられているそうなので、沖縄の造り手たちのこだわりをすごく感じます。搾ったその日のうちに仕込む必要があると知り、「そこまで手間をかけているのか」と驚きました。

島ごとの黒糖に、甘みだけでなく塩味や酸味、香ばしさといった個性があることも、今回はじめて知りました。同じ黒糖でも、育つ島によって違うのだと知り、それぞれの造り手が長年、自分たちのスタイルで工夫を重ねてきた苦労が伝わってきます。ラベルに描かれた島の物語を読むほどに、「島の数だけ、造り手の思いがある」のだなと思いました。

私は、海と砂糖きび畑の景色が好きで離島によく遊びに行きますが、ラムの酒造所があるとは気づきませんでした。次に離島を訪れるときは、その島の造り手が積み重ねてきた工夫や思いを感じながら過ごしたいと思います。普段は島でビールを飲むことが多いのですが、次はラムも一緒に楽しんでみようと思います。

まとめ

沖縄のラムは、島ごとの黒糖と酵母の違いによって、驚くほど異なる香りを描き出します。伊江島や伊平屋島のような本島に近い島から、波照間島や与那国島のような遠く離れた島まで、それぞれの黒糖には土地の記憶が刻まれています。8つの島の個性を知ると、ラベルを見る目も変わってくるはずです。次に沖縄のお酒を選ぶときは、島の物語も一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。

あとがき

今回調べたことで、これまで何気なく飲んでいたお酒の見え方が変わりました。ラベルに描かれた島の名前を見るたびに、その背景にある人や土地の物語を思い出しそうです。沖縄のお酒を選ぶときは、あえて離島の黒糖ラムを手に取ってみようかなと思っています。友人と飲む機会があれば、島ごとの味の違いについて語り合ってみようと思います。

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